先年惜しくも亡くなられた内田康夫氏の代表作、「浅見光彦」シリーズが遂に完結(?)したので、久しぶりに最後の2作を読んでみた。
学生時代から、もう30年も読んでいるが、以前は新刊が出るたび買っていたが、ここ10年くらいは作者が寡作になっていたこともあって忘れて(?)いたが、作者死去のニュースと、その後、絶筆を別の作者が書き継いで完成させたので、読んでみた。
まずは、
『遺譜 浅見光彦最後の事件』


作者はこの後も何作かは書くつもりだったようだが、その前に書いておいた「最後の作品」。
「永遠の33歳」の浅見が34歳となり、誕生日パーティーを、かつてのヒロインたちが集まって開催されるところから物語は始まる。
パーティーの仕掛け人は『高千穂伝説殺人事件』の本沢千恵子。そして『平家伝説殺人事件』の稲田佐和も思わせぶりな形で登場する。本作のヒロインは、千恵子と同じヴァイオリニストのアリシア。但し、物語の重要な鍵を握ってはいるが、珍しく浅見と恋仲になるわけではない。舞台は東京、軽井沢、丹波篠山、神戸と続き、なんとドイツとオーストリアにまで飛んでいる。
重厚なストーリーの、作者渾身の一作であるが、気になるのは、やはり浅見の結婚問題と、なぜ探偵稼業を止めることになったのか、その2つに何らかの回答が下されると思い読み進めていった。さて結果や如何に・・・。
★★★★★浅見が登場して30年だそうである。いつの間にか私もとっくに浅見の歳を追い越してしまった。関係ないが、私が結婚したのはまさに浅見の年齢、33歳だった。
そして、
内田康夫 『孤道』
和久井清水 『孤道 完結編 金色の眠り』


毎日新聞の連載小説だったが、掲載中に作者が脳梗塞で倒れられて続行不能となり、完結編を公募した。当初は、内田康夫氏ご本人が最終選考を行う予定だったが残念ながら間に合わず他界され、残った人達で選考され、完結された作品。
はっきりしないのは、時系列的に『遺譜』の前なのか後なのか。浅見の年齢は出て来ないが、結婚している風でもない。そのあたりはぼやかしているようだ。但し、ヒロインに思いを寄せるのは浅見ではなく、浅見の後輩の新聞記者である。
作品の舞台は主に和歌山。特に海南市の藤白神社が重要な舞台となっている。
ここは今年5月に『天穹』の全国大会で吟行した場所であった。
そうと知っていれば、完結編も3月に刊行されていたことだし、行く前に読んでおくのだった。
物語は、この藤白神社ゆかりの人物が、大阪高槻の、今日では藤原鎌足が被葬者といわれている阿武山古墳の発掘に立ち会うなど歴史ロマンを感じさせる内田康夫らしい作品であった。
完結編も、最初はやはり文体の違いに違和感を持ったが、読みすすめるうちに気にならなくなった。
内田氏は、全体のプロットも、犯人も決めずに書き始める執筆スタイルであり、絶筆の時点で犯人は「不明」だったようだ。
もちろん完結編は内田氏が書いていれば違う犯人が提示されたのだと思うが、「これもありだな」と思わせるくらい、違和感なくストーリーが組み立てられていた。
談山神社の八講祭が出てきたところなど唸らされたし、牛馬童子の首が切られた謎についてもきちんと説明されていた。
★★★★☆「旅情ミステリー」の名の通り、各地の観光名所が登場する、非常に映像化向き(特に2時間ドラマ)の作品であり、過去に繰り返し制作されてきたが、私の浅見のベストは沢村一樹だった。
内田康夫氏に風貌が似ているのが榎木孝明と沢村一樹。年齢的に、軽井沢のセンセ=内田康夫、陽一郎=榎木、光彦=沢村なら完璧と思っていたのだが、この3人の共演作は制作されなかった。残念。