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辻村深月 「傲慢と善良」

今日届いた「天穹」6月号では、久しぶりに花丸と選評をいただいた。

蔵書とも云へぬ山塊万愚節

選評は、
「霞童さんは無類の読書家だ。書斎には種々の本が山積みなのだろう。読書の結果は必ず人生の糧になる筈だ。」
と、先日主宰を退かれた佐々木建成名誉顧問に書いていただいた。(来月号まで前主宰の選となる)

「無類の読書家」はやや誇張があるかもしれないが、嬉しかったので最近読んだ新刊の書評を書いてみよう。




ミステリー仕立て、というかミステリーそのものと言っていいが、テーマは「婚活」である。
中でも、途中から出てくる結婚相談所の主宰者が、ストーリーにはあまり関わらないが、「婚活」の面でのキーパーソンとなっている。
曰く、結婚相手に出会った時に感じる「ピンと来る」とは、自分につけている点数より相手の点数が高い時にそう思うのだそうである。それも、自分の欠点には目をつぶり、自分の売りになる点と、相手の一番低い部分の点を比べて、相手の方が高い時に「この人と結婚したい」と「ピンと来る」のだそうだ。そして、その場合は当然のごとく殆どが断られる。傲慢に自分の点数は高く付けて、「いい相手と巡り会えない」とお見合いの回数ばかりが増えてなかなか決まらない人が多いそうだ。
「高慢と偏見」にタイトルが似ていると思ったが、その点にも言及されていた。

★★★☆☆
読みやすく、物語に引き込まれるが、人間の本音の嫌な部分が見え過ぎか?
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第160回芥川賞



芥川賞の受賞作を、いつものように文藝春秋で読んだ。

今回は2作。上田岳弘「ニムロッド」町屋良平「1R1分34秒」

「ニムロッド」は仮想通貨を「掘る」仕事をしているIT会社社員の話。
今どきの題材を取り入れた現代的な作品。作者の自画像は主人公でもあり、登場する友人でもあるようだ。構成や主人公の名前に工夫を凝らしている。

「1R1分34秒」は、なかなかパンチの効いた作品。C級ライセンス(四回戦)のプロボクサーの細部を丁寧に描いている。特にボクシングの技術面の描写は経験者にしか知りえないリアルさが真に迫ってきた。芥川賞受賞作では「太陽の季節」も主人公がボクサーたが、全く違う。
個人的な好みで言えば圧倒的にこちらだが、構成に技巧を凝らしすぎた。この作品は、愚直にボクサーの描写だけで勝負出来たと思う。


受賞作2作品に共通しているのは、少ない登場人物と、その関係性を丁寧に描いているところである。特に親しい人とのコミュニケーションが大きなテーマとなっているところも同じである。このあたりが作品の現代性なのか?
現代的といえば、両作品とも、小道具としてiphoneが使われている。

ビートたけし 『フランス座』



昨年末に出た新刊。
ビートたけしの自伝的小説はいくつかあり、聞いたことのあるような話も書かれていた。

何故、このブログで紹介しようかと思ったかというと、装丁がとても気に入ったからである。

実は、将来(想定では退職金を使って)、句集を出版するときの装丁がもう気になっている。
自分でやるセンスは到底ないので、気に入った装丁家はチェックしようと思っている。

以下、備忘録。

「装丁 大久保明子」と書かれている。

検索してみるとかなり有名な装丁家のようだ。
文藝春秋社所属らしい。個人句集を頼むのは無理か。

裏表紙の、このツービートを模したトイレマークもなかなか良い。
フランス座

そうそう、本の内容だが、

たけしの師匠、深見千三郎はテレビに出なかった(出られなかった?)。
師匠に深く影響を受けていたたけしは、若手芸人がテレビに出ようとテレビ局のディレクターが劇場に来た時は芸が上品になったりするのに背を向けて、とてもテレビ向きとは言えない、毒舌や下ネタの芸を客前で磨いていった。

野地秩嘉 『トヨタ 現場の「オヤジ」たち』



トヨタの「中卒の副社長」河合満氏を中心に、トヨタ工場の現場で働いてきた人々の物語。

前回のブログの千松信也氏が「京大卒の猟師」だから、対象的なお二人である。

河合氏が副社長になることができたのは、トヨタの特色である「カイゼン」に人一倍取り組んだことと、現場で生産性を上げるためには社長にすら歯に衣着せぬ物言いをできたこと、のようだ。
もちろん、トヨタのもう一方の特色である、アットホームな雰囲気に合っていたこともあるだろう。

よく、海外メーカーと日本のメーカーの対比で、「給与が同じはずの作業員がなぜ会社のために尽くすのか」「やりがいを感じることが高品質を生む」などと日本の生産現場の優位性を説かれることがあるが、本書でもそうだが宗教に関する考えが抜け落ちてる。
キリスト教圏では、アダムとイブが禁断の果実を食べてしまったばかりに、つまり「原罪」を背負うことによって楽園を追放されて、その子孫まで「労働」という苦役を背負わされたということになっている。つまり、日本人のメンタリティにある「働く喜び」とは対象的なわけである。
日本の経営者は、本書にも書かれているが、豊田英二氏や豊田章男氏が現場を大切にしたり、作業員出身の副社長が誕生したりと、「経営と現場の一体化」が善として強調されるが、キリスト教圏では工場で働く人たちは「原罪を償っている人々」に過ぎず、それこそカルロス・ゴーンではないが、現場の人間を簡単に切って経営層が高額な報酬を得る(汗水たらして働かなくていい人々は「原罪」から開放された特権階級と思っている)ことを「当然」と思うわけだ。
つまりは、製造業においてキリスト教圏に対して、非キリスト教圏である日本が優位に立つのは「日本人の勤勉さ」「教育水神の高さ」が原因ではなく、単なる宗教観の違いであり、ある意味当然のことであって、日本のライバルとなり得るのは非キリスト教圏の国々となる。

★★★★☆
「ジャスト・イン・タイム」「カンバン」などの「トヨタ生産方式」に関する書物は多いが、少し違った切り口から見るとこんなに面白い読み物になるのかと感心した。一気に読み通せた。

千松信也 『ぼくは猟師になった』

  

角川「俳句」12月号の、宇多喜代子さんの対談記事「今、会いたい人」のお相手・千松信也氏は、なんと猟師。

確かに歳時記には「狩」「狩人」「猟」「猟名残」など一般には普段馴染みのない季語が並んでいる。
そして狩猟対象動物はなぜか、「鹿」「鹿狩」「猪」は秋、「猪狩」「熊」「熊突」は冬と、微妙に分かれてる。
また、「鹿垣」「鹿火屋」など、獣害に関わる言葉も季語となっている。

そんな中、現役の猟師の体験談は大変興味深く、対談相手である千松氏の著書を早速読んでみた。

猟師と言っても、この方は銃は持たずに、罠で猪・鹿を狙い、網で鴨類と雀を狙う。
銃を所持するよりハードルは低いが、猪に止めを刺すときは身を危険に晒す場合もあるそうである。

また、「猟師」といっても猟で生計を立てているわけではなく、自分と身の回りの人たちの消費分だけを獲っているとのこと。
野生動物の肉は「硬くて臭い」と私もそんなイメージを持っていたが、きちんと下処理をした肉は臭くはなく、冬の始まり頃の肉は硬くもないと言う。

とても興味深い書であり、猪は本当に美味しそうだったが、自分が猟をしたいかというと、無理かな、とは思う。
★★★☆☆
プロフィール

鈴木霞童

Author:鈴木霞童
平成25年「天穹」入会。30年同人。
定年後に専門俳人になることを目指して修行中。

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