専門俳人を目指しています。俳句評論執筆のための文章修練、及び俳句実作。厳しい批評をお待ちしております。

# 二十四節気俳句生活

# 門井慶喜 『銀河鉄道の父』



今年度上期の直木賞受賞作。

宮沢賢治の作品の特徴に深い人間愛、弱者へのいたわりがあるが、これは質屋などを営んでいた豊かな生家への反発であると言われてきた。
その中で、どんな家庭に育ち、長男でありながら賢治の活動がどのように許されたのか、賢治ファンにとっては確かに気になるところではある。
本作は、商いに厳しく、賢治に甘い父・政次郎と家族の姿が描かれる。政次郎から見れば、賢治は終生、「大きな子供」であった。

「雨ニモマケズ」の手帳を賢治の生前に父が知っていたなど、事実と違うと思われる記述もあるが、概ね事実に即して、政次郎・賢治の親子像が描かれている。

★★★★☆
スポンサーサイト

# 文藝春秋 3月号



芥川賞受賞作2作をようやく読み終えた。

今回の受賞2作は、既にいずれも単行本化されているが、私はいつも通り文藝春秋で読んだ。安上がりだからというのがもちろん最大の理由だが、選評や著者インタビューが読めるのも大きい。
選評など気どった文章で書かれているのを読むと(特に島田雅彦と山田詠美)、芥川賞の選考委員というのは偉いのだなぁ、と思う。

今回の受賞2作は、両作品とも通常の芥川賞の水準を上回っていたと思う。「きとこわ」「苦役列車」以来かな。


百年泥 ★★★★☆
インドのチェンナイに辿り着いた主人公の、インドの気候、風土によりもたらされる幻想の世界。「熱気」が伝わってくる。


おらおらでひとりいぐも ★★★☆☆
夫を亡くし、子どもたちと疎遠とも言えない、ごく普通に見える一人暮らしの老婦人の内面の孤独。


ちなみに両作品ともに山ビルが登場する。すごい偶然!

# 矢作俊彦 「ららら科學の子」



三島賞受賞作。
1968年、学生運動で指名手配を受けた主人公は紅衛兵となるために中国に密航する。
文革の方向転換で下放されて農村に30年、今度は蛇頭を頼って帰国してきた。
1998年、中国も都市部ではかなり発展していたはずだが、辺境にいた主人公にとって日本は変わりすぎており、現在では裏社会の顔役となっていた旧友の助けを借りてかつての「自分」を取り戻してゆく。
中国時代の「回想」がところどころ散りばめられて、全編を読み通せば中国での30年も浮かび上がってくる。

★★★★★
純文学系の三島賞受賞作であるが、中身は矢作俊彦らしいハードボイルド作品。


この本のタイトルを見て、俳句を嗜む人は小川軽舟の句、

かつてラララ科学の子たり青写真

を連想する方も多いのではないかと思うが、読んでいるうちにこんな記述が見つかった。

「写真の長嶋は、白髪の老人だった。先刻、洋服屋の店先に映った自分の姿より、それは胸に痛かった。(126p)」

これは
日記果つ父老い長嶋茂雄老い

を連想させる。どちらも『呼鈴』(2012)所蔵。

本書が単行本化されたのは2003年であるから、もしかしたら小川軽舟は本書を読んで上記2句を創作したのかもしれない。

# フィル・ナイト 「シュードッグ」


ナイキ創業者、フィル・ナイトの自伝。

私はナイキは履かない。昔はよく履いていたが、ここ数年、スポーツシューズはアシックスと決めている。耐久性が全く違うのだ。
ナイキの靴は、本書にも書かれているエア・シリーズも含めて、1~2年でソールが剥がれたり、エアの空気が抜けたりする。アシックスは丈夫である。10年くらいは平気だ。スポーツシューズは10年も履けるように設計されていないのかも知れないが、アシックスはそれを可能としている。

本書はそのアシックスがオニツカ、ナイキがブルーリボンという会社名だった頃から始まる。
フィル・ナイトはオレゴン大学の陸上中長距離の選手であり、スタンフォードでMBAを修め、後にプライス・ウォーターハウスで会計士になるという、本来であればビジネス・エリートにもなれる経歴の持ち主であるが、一つのアイデアを持っていた。
日本のカメラメーカーがドイツ、ライカの牙城を崩そうとしていた1960年代、アディダス、プーマが世界を席巻していたスポーツシューズの世界でも同じことを起こせる可能性がある、つまり、日本のオニツカが市場のドイツ勢を駆逐する可能性があると踏んだのである。
会計士の仕事をしながらオニツカの米国での販売代理店として会社を育て、事業を拡大したところで、当のオニツカから乗っ取りを企てられる。
そこで彼は自社ブランド「ナイキ」を立ち上げて、世界的な、いや世界一のスポーツシューズブランドを目指そうとする、創業の1962年から株式公開の1980年までが描かれている。

創業者が会計士であり、財務に明るいからかギリギリのキャッシュフローで経営し、事業は拡大に継ぐ拡大路線を取ることから、時に経営危機に陥ったり、またオニツカに裏切られた後、助けたのが同じ日本企業の日商岩井であることもあり、日本への「愛」をところどころ披瀝したりしながら、物語はスリリングに進んでいく。

最後に、現代の彼と彼を取りまく人々の状況を描くとともに、「やり残したこと」として本書を書く決意をするところで物語は終る。

これは映画化されるのではないか。

★★★★☆
読みやすく、最後まで飽きずに読める、ベストセラーになったことも納得の一冊である。

# 万城目学 「とっぴんぱらりの風太郎」(上)(下)



この作者の作品はどれも好きだが、この初めての時代小説もなかなかイケる。
というより現代を舞台とした作品より面白い。万城目学の現時点での最高傑作ではないだろうか。

伊賀の忍者が主人公。
筒井家が改易となり、藤堂高虎が城主としてやってきて、軽く扱われるようになった忍者たち。主人公は風太郎だが、同年代の若い忍者たちの群像劇としても物語は進んで行く。
舞台は伊賀から早々に京に移り、そして大坂。史実に忠実(?)に、慶長18~20年頃を舞台に、大阪夏の陣までが描かれる。
歴史に残らない忍者や市井の人々は、本当にいてもおかしくないように描かれるし、伝説の果心居士なども登場し、万城目学らしいファンタジーにも彩られる。
アクションシーンはなぜか、「ハリー・ポッター」シリーズを思い出してしまった。
御土居など、京の町の描写も史実に基づいている。

挿絵もいい。
読んではいなかったが、連載していたのを覚えていた。誌名は忘れていたが週刊文春だったようだ。

★★★★☆
大傑作だが、ラストはあれでよかったのか?

# プロフィール

鈴木霞童

Author:鈴木霞童
平成25年「天穹」入会。30年同人。
定年後に専門俳人になることを目指して修行中。

# ブログランキング

ブログランキングに参加しています。 クリックで応援して下さい!

# 最新記事

# カレンダー

05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

# メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

# 初心者向け基本書籍

# 検索フォーム

# ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

# QRコード

QR