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福永法弘 『夢に見れば死もなつかしや 小説・木歩と声風』



薄幸の俳人・富田木歩と、彼を世に送り出した新井声風の伝記的小説。
二人の出会いから、関東大震災での別れまでが描かれている。
概ね事実に即したフィクションである。

足が不自由で学校に行けず、貧しさから姉妹は次々苦界に身を沈め、弟妹は結核で命を喪い、本人も同じ病に冒され、最期は震災による火災から逃げ切れずに死んだ、、、生前の木歩を一心に支え、生前もそうだったように、死後も彼の業績を世に送り続けた声風、、、とまあ、これまで知っていた通りの内容であったが、もちろんそれだけではない。

後半生(といっても死ぬまでの数年間)は、姉の「旦那」の庇護のもと、貸本屋など営んで安定した生活を営むことが出来たようだ。
本書では、その機会を得る一端に声風が絡んでいるようにも書かれているが、実際はどうだったのだろう。

木歩は生涯何度も転居しているが、その殆どが向島界隈であり、姉妹もそうだが、周囲に色街関係者が多かった。そのあたりの風俗も丹念に描き込まれている。一概に「苦界」といっても、姉妹は吉原に行ったわけではなく、向島近辺のいくつかの色街で、芸妓とも娼妓ともはっきり区別のつかない「仕事」をしていたようだ。三味線などの芸があれば体を売る仕事ばかりではなくなる。そんな中で長姉と次姉は「旦那」を見つけて妾として囲われる。それなりの幸せを見つけるのである。

原石鼎、臼田亜浪、渡辺水巴ら「師」を含めた俳人たちとの交流録については、著者が俳人であることもあり、ほぼ事実が書かれていると思われる。

そして声風。彼の存在は、本書の掉尾近くの一文で全てが語られている。
「俳人新井声風の名は、境涯俳人富田木歩を世に知らしめた功績に於いてのみ後世に残るのである」
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小川軽舟 『朝晩』



冷奴電気が高くなりにけり

単身赴任中の作者、夏になれば冷房を使うため電気代が高くなる、私もそうだがこういうことは奥様任せだったのだろう。実感の一句。

一回表アルプス席西日まともなり

18時試合開始のプロ野球と読めなくもないが、「アルプス席」と言えばやはり高校野球。
昔は高校野球の試合時間は2時間程度と短かったが、最近は長くなり第4試合のプレイボールが17時頃になってしまうことはよくある。作者が大の高校野球ファン、かどうかは存じ上げないが、例えば朝から銀傘の下に陣取って、第4試合、やっとお目当ての強豪同士の対戦が始まった、、、などと読むと感慨深い。(それも今年は見ることが出来ないが)

ナイターの膝の通勤鞄かな

これは明らかにプロ野球、しかも作者の通勤経路に球場があり、チームの親会社の関係者でもある。単に切符を手に入れて観戦しているのか、あるいは接待か。いずれにせよ、バックネット裏の余程いい席で見ている景が見える。

クリック又クリック涼し本漁る

新刊書ではなく古書であろう。俳句関係の資料か。一冊づつ状態も値も違う古書をネット通販で買うのは意外と難しい(当たり外れが大きい)。それでも冷房の効いた部屋で「漁る」のは楽しいものである。

種馬は仔馬を知らず春の川

北海道の日高地方、新冠川や静内川の両岸には競走馬の生産牧場や種馬場が点在し、春になれば毎日種付けが行われる。サラブレッドは他の家畜と違い人工授精は認められておらず、必ず「行為」があるわけだが、他の家畜同様、父がその子を認識することはない。笑えない話で、人気の落ちた種馬が、そうとは知らず、娘の「当て馬」を務めることもあるとか。

水に生まれ水に生みける蜻蛉かな

「天穹」の祖師・松野自得の「風吹けば風から生れ赤とんぼ」と対をなすかの一句。現実的という意味では揚句が正解であるが、「風の中」「水際」どちらも蜻蛉の姿としては正しい。

太陽の見えぬ夕映街寒し

ビル街の夕映を詠んだ句は多いが、高層ビル群をそうとは書かずに読ませており、「寒し」との取り合わせも実感がある。

メリケン粉溶いて通天閣に雪

メリケン粉溶いて? はて? と思わせておいて、「通天閣」でお好み焼きとわかる。雪がよく見える小さな庶民的な店であろう。

丸めたる銀紙軽き花見かな

個人的にこういった句は好きである。また、自分でも作れそう、、、とは言い過ぎと思うが、こういった「小さな発見」を見逃さずに句にしていきたいと思っている。

汐干狩馬穴が汐に浮きはじむ

潮が満ちて来ればそろそろ終わりの時間。「馬穴」は子供用の小さなプラの馬穴を想像する。

サイダーや有給休暇もう夕日

「サイダー」が効いている! この作者が用もなく有給休暇など取るはずもなく、俳句の仕事、執筆か選句か、あるいは両方か、夢中になって集中して、ふと気づけば夕日。気の抜け切らないうちに飲みきれたと思いたい。

冷奴庶民感情すぐ妬む

「妬む側」でもなく「妬まれる側」でもなく、第三者としての立場であろうことが、私には「冷奴」から読み取れた気がした。

めらめらと氷にそそぐ梅酒かな

氷に注がなくとも「めらめら」している梅酒、オンザロックにする時はなおさら。マドラーを使う様子まで見えて来そうだ。

ブックカバーチャレンジ DAY7


谷川流 『涼宮ハルヒの憂鬱』

アニメ化されて、「京都アニメーション」が一般的に(オタク以外にも)認知されるようになった作品。
シリーズ化されており未完だが、9巻以降の執筆ペースが大幅に落ちている。
ジャンルはSF。

ブックカバーチャレンジ、本日で終了。
全般的に見て、映画やアニメ化されたベタな有名作が並んでしまった。
「涼宮」以外は、映像化より先に読んでいる。「涼宮」はアニメが話題となって存在を知ったが、当時DVDがずっと貸出中でなかなか借りられなかったので原作を先に読めた。

また、DAY5以外は主人公が10~20代の若者向けの作品となった。

ブックカバーチャレンジ DAY6


米澤穂信 『氷菓』

現在、最も好きな作家である米澤穂信のデビュー作。シリーズ化されている。(未完)

ジャンルはこれまでの5冊は恋愛小説だったが、本作はミステリー。

山崎賢人と広瀬アリスで実写映画化もされたが、TVアニメ版は京都アニメーションで制作されたが、監督の武本康弘は放火事件によって47歳の若さで他界した。

ブックカバーチャレンジ DAY5


白石一文 『一瞬の光』

父の白石一郎と直木賞親子受賞した作家。
そういえば直木賞受賞作の『ほかならぬ人へ』は未読だった。
プロフィール

鈴木霞童

Author:鈴木霞童
平成25年「天穹」入会。30年同人。
定年後に専門俳人になることを目指して修行中。

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