専門俳人を目指しています。俳句評論執筆のための文章修練、及び俳句実作。厳しい批評をお待ちしております。

# 二十四節気俳句生活

# 「メヌエット」 石井信生

メヌエット

石井信生氏の第一句集。
氏は「天穹」の編集に携わられておられるが、兄弟結社である「創生」の編集部長でもあるそうで、本句集も「創生叢書」と銘打たれている。


ポストまで歩けるほどの春の風邪
すててこのままでは遠きポストかな


俳句を始めてから、句稿送付などポストのお世話になることがとても増えました。
作者のお宅からそう遠くない場所にポストはあるようですが、多少の風邪であれば歩いていけるが、すすてこでは憚られる、といった距離かと思われます。

松手入頭も弟子も無精髭

「技は盗んで覚える」時代ではないのかもしれませんが、職人としての生き方など、師を手本とする部分は多いと思われます。無精髭も。

ウィーンより「蒼きドナウ」の御慶かな

大晦日は紅白歌合戦、元旦は演芸番組を見るばかりが日本人ではありません。音楽関係の教育者であった作者はN響の第九と、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートで年末年始を過ごされるのでしょう。

偉さうな名医の打診大西瓜

ベテランの農家、あるいは八百屋は訳知り顔に西瓜を指で弾いて「診断」します。「偉さうな名医」とは上手い比喩です。

燃え尽きしあとも直立曼珠沙華

曼珠沙華を炎に見立てる句は多いですが、散った後に茎だけ直立している姿を「燃え尽きし」と詠んだことが、この花の特徴を上手く捉えておられます。

オフにしてまたオンにする春炬燵

必要か必要でないか、その日のうちでも微妙な春炬燵。快適さを保つためには小まめな切り替えが大切です。

一杯の試飲の呪縛新茶買ふ

まさか本当に「試飲してしまったがための呪縛」で買われたわけではありますまい。試飲した新茶も魅力的だったのでしょう。反語的にしたところに俳諧味を感じます。

かき氷くづすアングル見つからず

ふわふわの氷が器一杯に盛られ、どこにスプーンを入れればいいかわからない事があります。贅沢な悩みと言えます。

稲刈りや軽トラックはなべて白

言われてみればその通りです。各家々が稲刈りに出て、広い田園地帯に何台も軽トラックが見えての実景が目に浮かびます。
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# 「俳句」7月号から

角川「俳句」7月号の特別企画「若手競詠&同時批評」。
どういうことかと思ったら、「45歳以下の俳人29名に作品10句を依頼」「ランダムに並べ直し4人の評者が選句」という句会形式の企画であった。(4人の選者は、渡辺誠一郎、藤本美和子、奥坂まや、鴇田智哉の各氏)
なかなか面白い企画と思ったが、タイトルをつけて10句の構成を考えて投句したとしたら、バラバラにしていいのかな? と少し心配でもある。

全290句は記名で掲載されているので、無記名の選に入った句の中から、私も句会形式で選句してみた。果してどなたの句か。


ジャケットに蟻這ひ登る母校かな 杉原祐之 渡辺特選、藤本並選

「母校」と題されて十句すべてが母校を題材とした句。その中の一句であるが、大人になった作者とグラウンドの土の景が見えてくる。

誰もゐぬ港に虹の立ちにけり 涼野海音 渡辺特選、藤本並選

虹は美しいものであるがいつどこに出るかわからない。無人の港にも。

うつすらと濡れて粽の笹の嵩 安里琉太 渡辺並選、鴇田並選

大袈裟な笹を剥いて食べるのがまた嬉しい粽。びっくりするくらいの嵩になり、確かに濡れています。

氷菓食ふいつも小さき声の人 音羽紅子 藤本並選

声の小さい人だって氷菓を食べるでしょうに! 余程大きなかき氷かパフェでも頬張っていたのでしょうか。

五月来る森の中なる神学部 涼野海音 奥坂並選
ジューサーのぐおんと回り夏に入る 森下秋露 奥坂並選

奥坂氏が選ばれている2句。「五月来る」と「神学部」、「ジューサー」と「夏に入る」の季語の斡旋が絶妙です。「鷹」の奥坂先生らしい選です。
森下秋露氏の句はすべてにカタカナが入っていました。意識的にそうされたのだと思います。敢えてカタカナにしている「地下足袋に来てスズメバチ駆除業者」も面白いと思いました。


私には「皆さんお上手だなぁ」としか思えませんでしたが、選者の方はなかなか厳しいことを言っておられる。

# 「俳句界」5月号鑑賞

蓋開いて箱に仔猫の三匹も  小澤實

昔よく見かけた捨て猫も、すっかり見かけなくなった。かつては、それでも誰かが拾って育ててくれたのだろうが、今はそれも期待薄、ということだろうか。「三匹」がリアルである。

郭公や斜度を増しゆくロープウェー  小山徳夫

ロープは撓むので、確かに頂上付近は最も斜度がきつくなるが、それ以上に僅かな時間で、麓から郭公が似合いの深山へ一気に運ばれる異世界性が面白い。風景ががらりと変わるさまを上手く切り取っている。

万緑や原子炉裸見せしまま  五島瑛巳

「万緑」が効いて原子炉と呼応している。あれから6年、木々に吸収された放射性物質もだいぶ崩壊してきただろうか。

老木と思へぬ山の若葉かな  杉本艸舟

生命感に満ち溢れている若葉、木が老木であることも一瞬忘れ去るほどである。

星涼し森に化石を眠らせて  環 順子

全身骨格が発見された「むかわ竜」のニュースは新しいが、まだまだ未知の化石が眠っていそうだ。

地球より酸素の洩るる良夜かな  姜 琪東

どんなに月が近く見えても、地球から遠く離れた大気のない世界。とはいえ、ちょっと信じがたく、空気のある夜空に浮かんでいるようにも見えます。

囀りや鳥にはじまる修羅の日々  川上呉郎

六道で人間と畜生の間の修羅。囀る小鳥も来世は人間に生まれ変わるか、あるいは前世は人間で俳句でもひねっていたか。
・・・という風に解釈したが如何。

竹皮を脱ぎて土の香捨てにけり  大矢恒彦

一気に伸びる筍。数日前まで土の中にいたとは全く思えないほど見事な若竹となる。

# 「天穹」5月号鑑賞(5)

毎月それなりの自信作を投句しているが、掲載順は色々である。自分の句の良し悪しはなかなかわからないものだが、他の会員の方々の句と並べられているのを順々に読むと、掲載順位には深く納得する。

渋谷春店の外までチョコレート  田中国太郎

流行の発信地、渋谷。時期になるとチョコが溢れるのは他の街と一緒ですが、何か特別感がありそうな気がします。「渋谷」が効いている。

風邪に寝る妻に一日を仕る  星加鷹彦

もしかしたら句会の予定が入っていたかも知れません。言葉にすることの苦手な日本男児の愛情表現です。

今もいつかは昔とならむ檜植う  白木伸子

時間の経過を俳句で詠むのは難しいと言われますが、この句は成功しています。「今」と「昔」を使い「未来」を表現しているところも魅力的です。

節分や横綱の手に小さき豆  芹澤修士

力士と豆撒きの取り合わせの句は多いですが、この句は手の大きさと豆の小ささの対比が面白いです。

鳥帰る往復はがき投函す  前川尚子

何の往復はがきかわかりませんが、同窓会などの案内状を想像すると、返事が来ないのが何通か、全員が帰れるわけではないであろう「鳥帰る」と呼応しているように感じます。

山笑ふ土木学部の道普請  籠田和美

どういうものか想像でしかないが、学生が実習で「道普請」をしているのか、それとも単に土建屋さんにインターンで入っているのか。未知の領域なので興味は尽きないが、若い人が見よう見まねで将来目指す道に進もうとしている姿が、「山笑ふ」に合う。

朧月パン種ちやうど良き加減  鈴木とも

一次発酵、二次発酵とパンを焼くまでの待つ間の楽しさ、そして酵母の薫り、まして朧月を眺めながらなんて、なんて贅沢な時間でしょう。

春雷や思わぬ打者の三塁打  益井善清

ロバート・レッドフォードがオールドルーキーの主人公を務めた映画『ナチュラル』を思い出しました。贔屓のチームでのことであれば春雷は幸運の予兆です。

椅子ずらす音一斉に新入生  唐笠美智子

無論小学校の入学式でしょう。厳しい先生の元、何度も練習を重ねたに見えます。上手く揃ってお見事、と言えるでしょう。

麗日や医院に響く「あら元気」  川崎まさを

医院で出会ったのだから元気なわけないのですが、この日本ではありそうです。先日読んだ本には、日本の医療の「アクセスの良さ」が取り上げられています。アメリカではお金がないとかかれないし、医療が無料の国は医師の診断を受けることは簡単ではないとのこと。

草萌ゆる「春の小川」の碑有りけり  林敏博

私も行ったことあります。参宮橋駅の近く。「こんなところに」と今では驚くほどの都会です。近くにあった刀剣博物館はこの三月末で閉館し、来年両国に移転するようです。


(以上、「花篝」欄よリ。)

# 「天穹」5月号鑑賞(4)

ややこしき人の嫉妬や猫の恋  藤本さな女

なんでこんなことまで、と思うほど人の嫉妬の種は尽きず、気をつけていないと妙なことに巻き込まれかねません。自由そうな猫の恋愛が羨ましい?

ものの芽へ蠢くものに犬の鼻  山下早千子

犬の鼻との取り合わせがお見事です。冬が終わり、景色が変わってきた様子に犬も興味津々です。

空白のスコアボードや土手青む  島田道世

河川敷の野球場でしょうか。スコアボードを使わないほどの、草野球までいかない気楽なお遊びか。のんびりした様子が伝わってきます。

冴返る外科病棟の常夜灯  利光克孝

外科病棟ですから、深夜の常夜灯は何か特別な意味合いが見い出せそうです。「冴返る」が効いています。

春浅き夜をサックスの叫びかな  坂場正保

浅い春の夜、当然まだ寒い時期ですが、肺活量を使うサックス奏者はそれほど厚着はしていないはず。薄着で必死に吹いている様はまさに「叫び」。季語も「サックス」も動きません。

春来る小町通りのクレープ屋  浜崎かづき

四季折々の楽しみのある鎌倉、春が来て少し人も増えてきた頃でしょうか。冬牡丹もいいですが、クレープもまたいいですね。

喰積の味年毎に薄くなり  山川千鶴子

基本的には味付けの濃いお節料理。生活習慣病予防のため、工夫して塩分を抑えているのでしょう。主婦の知恵と努力が伺えます。


(以上、「風霜」欄よリ。)

# プロフィール

鈴木霞童

Author:鈴木霞童
平成25年、俳句結社「天穹」入会。
定年後に専門俳人になることを目指して修行中。

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